引き継がれない精神

できごと

 

こんなことがありました。

自転車の空気が抜けていたので、空気を入れました。しかし、約1週間後また空気が抜けていましたので、空気を入れなおしました。さらに、1週間後また空気が抜けていましたので、自転車屋さんへ持っていき見てもらいました。

「虫ゴムがやられていました。念のため、チューブも確認しましたが、穴は明いていませんでしたので、虫ゴムを交換しておきました」と自転車屋さんのお兄さんが説明してくれました。

しかし、1週間後、また空気が抜けていました。

自転車屋さんに事情を説明して、もう一度見てもらいました。対応した人は別の人です。

「虫ゴムは大丈夫ですし、チューブも穴は明いていませんね。いたずらか何かですかね。。。しばらく様子見てください」

それから1週間後やっぱり空気が抜けていました。

もう、自転車屋さんまで自転車を持っていくのが面倒なので、自分で調べることにしました。1回目チューブを確認しましたが、穴は明いてませんでした。やっぱり、穴は明いてないのかと思いましたが、もう一度注意深く調べてみようと思い、再度確認しました。

空気を少し強めに入れて、少しづつチューブをまわしながら入念に確認していきました。

「ぷく・・・・・・・ぷく」ごくごく小さな穴を見つけました!

 

それからは1週間の短期間で空気が抜けることがなくなりました。



なぜ自転車屋さんはプロなのにこれを見つけることができないのか

 

全国に何店舗もあるそこそこ有名な自転車屋さんです。従業員も1店舗にたくさんいます。

パンク修理ができる従業員も常時3名以上はいると思われます。1日に何件も修理を行っている人たちです。技術も平均以上のスキルをもっているはずです。

 

しかし、ここに原因があります。

 

個々の修理クオリティは高いと思いますが、大手なので1回目の修理を担当した人と2回目の修理を担当した人が異なっているのです。つまり、どちらの人もこの自転車に対する修理作業は1回目の気分になるのです。

これが同じ人で前回の修理を記憶しているのであれば、前に見たときは穴が明いてなかったので「そんなはずはない」と2回目は注意深く調べるのです。

 

個人で営んでいる自転車屋さんであれば、ひとりですべての作業を行っているので、修理する人もひとりで自分しかいません。個人経営の小さな自転車屋さんであれば、2回目でこの小さな穴を見つけていたはずです。

 

マニュアルに基づきどの人が行っても同じ品質を保つことはすばらしいですが、担当者が決まっていないので、2回目となるとそれ相応の注意を払うという「意識の継承」ができないのです。お客様にとっては2回目でも、修理する側は1回目の感覚で作業をしてしまうのです。



類似

 

別の例でも同じです。

ある部品を加工して作る工程があるとします。A加工者が1回目失敗をして作り直しとなりました。今度、失敗は許されないのでA加工者は慎重に部品を加工し、次の工程へ渡しました。それを受け取ったB組立者が組み込むときに、誤ってその部品を破損させてしまいました。

 

この製品を待ち望んでいるお客様からすると「え、また!」となります。

しかし、加工者からすると2回目なので慎重に実施して成功したのですが、組立者からすると1回目になります。しかし、お客様からすると2回目なので「どうなってるんだ!」となってしまうのです。

 

1回目で別部署が失敗しているので、この案件は注意が必要であることを表示する必要があります。



電話によるお客様窓口も同様です。

1回目にいろいろと相談してこれを一度試してみてくださいと言われます。試してみたがうまく行きませんでした。

そこで再度電話するのですが、電話の相手は1回目の人とは異なります。情報としては引き継がれているようですが、試してみたけどダメだったというお客様の心情は引き継がれていません。

 

これを試してみてと言われ試してみたのですが、うまく行きませんでしたと伝えます。わかりました。では次はこれを試してみてくださいと言われます。

それでもうまくいきません。再度電話します。

 

3回目も1回目、2回目の人とは異なる人が出ます。これが1回目、2回目と同じ人であれば、これ以上は失敗できないので真剣さが異なってきます。

人が異なるため、どの案件に対する真剣さもある意味一定の品質が保たれているのです。



プライベートバンク

 

プライベートバンクはそれなりの手数料を取りますが、担当者がまさにどっぷりと家庭に入り込んできます。単純に投資の相談だけではないのです。なかには相続、会社の経営方針、子供の進路、娘の結婚相手などあらゆる相談にのります。

その一時の相談ではないのです。一生寄り添う相談者になるのです。深度が全然違います。過去の経緯を踏まえての意見が出てきます。コールセンターとは真逆の戦略となります。

 

担当者により品質の保ち方はばらばらになるのですが、その依頼者に寄り添った特別オーダー品質ができあがります。

 

どちらがいいというわけではないのですが、多種多様になりつつある時代ですから、これからは特別にカスタマイズされた一品ものが良いと感じます。